rain and his and her warmth.
<HE side>

公式主/彼シャツ最高ですよねということを言いたかった

紅く染まる頬も、ぶかぶかの男物のシャツ越しに覗く白い肢体も、なけなしの理性を吹き飛ばすのには十分だった。

*

私の自宅にやってくる道中、雨に降られた彼女を風邪をひかないようとりあえずシャワーを浴びさせ(一応自己弁護をさせてもらうと、この段階では下心などというくだらないことは微塵もなかった)、服が乾くまでは私のシャツを貸すことにしたのだ。が。
シャワー上がりの少し上気した頬と今にもずり落ちそうなシャツから見える白いうなじ。腕は袖が余ってまるで振袖のようになっている。自分のシャツがこんな破壊力を持っていたとは誰が想像できただろうか。私は数分前の自分を殴りたくなった。
完全に思考が停止してしまった私を、彼女は恥ずかしそうに見上げ
「やっぱりケントさんの服は大きいですね」
などとふわりと笑って言うものだからーーー
「………っ!」
「きゃっ…?!」
気がついた時には、彼女をソファに押し倒していた。驚きと困惑が混ざった彼女の声を聞きながら私の心臓は早鐘を打っていた。
恥ずかしさもあるが、それより飛びかかってしまいたい衝動を抑えているほうが大きかった。
手袋と眼鏡を放り投げ、まだ少し濡れている彼女の髪に指を絡めた。シャンプーの仄かな香りすらも私の熱情を昂らせる。
「あ、あの、ケントさん…私…」
自分の身に何が起こったのか分かっていない彼女を抱き起こし、そのまま腕の中におさめたまま私は言った。
「君はどうしてそう無防備なんだ?いや、そもそも私が何の考えもなしに自分のシャツを貸したことが間違いだったのかもしれない。君は笑うかもしれないが、私にも分からないんだーーーー君をこんなに愛おしいと思うのに、めちゃくちゃにしたくなる。…すまない」
腕の中から解放し間髪入れずに唇を奪う。自分の中の黒い衝動を彼女へ流し込むように。
彼女の頭を抑え、噛み付くようなそれも次第に甘く熟れた空気をまとったものになっていた。
「…っふ……」
随分長いこと唇を合わせていただろうか。行き場をなくした吐息が混ざり合い、顎を唾液が伝い落ちる。
私は唇を離しそれを追いかけた。顎から首にかけて唇を這わせているとこのまま食べてしまおうかとも思えてくる。
すると、それを読み取ったかのようにそれまでなされるがままだった彼女が身を縮こませた。
今更ながら、怖がらせてしまっただろうかと思い、残る理性の欠片を総動員させて彼女に伝えた。
「すまない、自制がきかなくなっているのは承知だ。もし本気で嫌ならひっぱたいても突き飛ばしてくれても構わない。だが君はさっきキスを拒まなかった。…それを了承だと、私は受けとった」
勘違いも甚だしいかもしれない。もし本気で拒むならやめるつもりだった。しかし先程のキスの間に私は気づいてしまった。

彼女が私の背中に手を回そうとしていたのを。

少しの沈黙の後に彼女は微笑み、ゆっくりと首を横に降った。
「…そんなこと、できるわけないじゃないですか」
「…っ、」
「謝らないでください。少し吃驚したけれど、私、嬉しいーーー」
彼女の言葉を待たず、私は2度目のキスをした。

君には本当に、かなわない。

end.